公開質問6:高FODMAPによる影響

<質問>
どんなに頑張って低FODMAP食を維持しようとしても
少量のFODMAPを避けるのは、けっこう難しいところもありますし
どうしてもカレー食べたい!というときは
「あー。これ食べたら、あと1か月苦しむかもなあ・・」
という気持ちに踏ん切りをつけないといけないというのは
なんともつらいですね・・・
自分の場合、低FODMAPを続けても、週末や連休前に、つい高FODMAPを「少量ならいいか」と症状でない程度に食べているので、くすぶりがあったのかと思います。
さて、この回答から、いくつか疑問がわいてきました。

質問1

FODMAPを食べて、症状が出る人とでない人の違いは、腸内細菌の種類の差なんでしょうか?
IBS
じゃない人がうらやましいです。
例えば、完璧な低FODMAP食を何年も続けたら(あるいは抗菌薬治療など併用したり)、反応する細菌が極限まで減り、高FODMAP食を多少食べたところでびくともしないようになるのでしょうか?
逆に、現在、高FODMAP食に反応しない人が、毎日、高FODMAP食を食べ続けると、ある日突然、IBSになってしまうということがあるのでしょうか?

質問2
FODMAPに反応する体質(腸内細菌)というのは、遺伝的、先天的ものなんでしょうか?(変えられないのか?)
腸内細菌の定着は生後しばらくしてから・・と聞いたことがあるのですが、子どものころから気を付けているとIBSにならないかも?といったような研究はありますか?
最近の子どもの食環境は高FODMAPにあふれていますので、こういう食生活続けたら良くないような気がするのですが(IBS以外の疾患も増えるでしょうが)。

 
<回答>
私も、同じように、高FODMAP食を食べる時は、「食って死んでやる!」
くらいの気持ちで食べていますが、やはり、その後は、辛いものです。
 
質問1.に対する回答
私が考えるに、低フォドマップ食の意味には、さまざまの要素があると思っています。
①FODMAP
を控えることによって、発酵を抑制するため、ガスや水分過多による症状が軽減する、②FODMAPによって増える菌を抑制する、
この他に、
③FODMAP
の中の何らかのアレルギーを抑制する、
小麦を抑制することにより結果的にグルテンフリー食の意味を兼ねる
 
 たとえば、低フォドマップ食で症状が軽減した場合は、もしかしたら、発酵が原因ではなく、牛乳のラクトース不耐症だけなのかもしれません。あるいは、果糖過敏症だけなのかもしれません。あるいは、発酵とあらゆるアレルギーと不耐症を持っているかもしれません。(例えば、昔、ある下痢の患者で、食品のアレルギーを調べたら、小麦も米も牛乳も、すべて強陽性だったことがあります。ですから、病院に行って、食品アレルギーを一度調べてもらうことも有用だと思います。)ですから、低フォドマップ食では、46週間、FODMAPを制限して、症状が改善することを確認して、何が大丈夫なのか?をチャレンジしますが、それによって、牛乳は大丈夫なのか?果糖は大丈夫なのか?調べてゆくのですが、私が納豆で経験したように、一回、大丈夫だと思っても、つまり、をクリアしても、の影響、つまり、菌が増加した状況で再度食べると症状が出現するということが起こります。
 以上から、低フォドマップ食で症状が改善する場合に、人それぞれの原因の違いによって、その後、全てFODMAPを制限するのか?一部だけの食品を制限するだけでいいのか?は変わります。過発酵だけが原因であれば、低フォドマップ食を継続することによって、菌数が減少し、発酵の原因の菌も減ることから、それ以前よりは、発酵しにくくなるため、食べない期間と量に依存すると考えられるため、それを、自分自身で確認しながら食べる種類を広げていけると思っています。
 抗菌剤の使用は、菌数を減少させるために有効なことがあります。人によっては劇的に改善することがありますが、その場合でも高FODMAP食で悪化することが多いことも経験しています。また、人の腸内細菌の種類は人それぞれであり、必ずしも有効でないこともあります。
まったく、IBSでなかった人が、高FODMAP食で突然、IBSになることは、あり得ると思います。例えば、パンダは誕生した時は、竹を消化する菌を持っていませんが、生後に経口的にその菌を獲得します。たとえば、私の患者さんに野菜だけ食べている親子がいましたが、常にお腹にガスと便が多い状況でした。それは、発酵によってガスが多くなっていることはわかりましたが、野菜だけの食生活なので、食物繊維を発酵させる菌が異常に増加しているのだろうと思いました。つまり、人間は、雑食ですが、草食だけにすれば、それなりに腸内細菌が変化して、草食動物のようにそれらを発酵させてエネルギーに変える菌が増加してゆくのだと思います。

質問2.
 遺伝の影響よりは、生後の食生活が影響していると考えます。哺乳類は、生まれる時に腸内も無菌で生まれます。すべて、生後の影響です。最近、発刊されたマーチン・ブレイザーの本に、いろいろ書かれていますが、そのなかで、赤ちゃんは、出産時に母親の膣の乳酸桿菌を大量に浴びて、飲んで生まれてきます。その乳酸桿菌が、初めて腸に定着する菌であり、その菌によって、母乳を分解して栄養を吸収することが来ます。そして、欧米では、帝王切開の時にも、母親の膣にガーゼを入れ、帝王切開で生まれた赤ちゃんにその菌を塗り、口にも塗ります。私は、最近のラクトース不耐症は、日本での帝王切開の増加も原因していると思います。
 さて、話の本筋に入りますが、オーストラリアのギブソン教授がなぜ、FODMAPに着目したのか?です。それは、オーストラリアで、第二次世界大戦の前には、ほとんどなかった病気が、どんどん増えてきていることに疑問を感じたところから始まりました。そして、潰瘍性大腸炎やIBSの急激な増加は、食品の変化に関係しているのではないかと考えたのです。これまでなかった病気が増えるとい原因は、明らかな感染症でない、明らかな大気汚染でもない場合は、明らかな薬害でもない場合、急激に増加した食べ物が影響していると考えるのが、私も正しいと思いました。そして、調べると、日本でも、乳製品の消費が戦後急増し、果物はどんどん甘くなり、さらに、異性化糖も急激に増え、小麦もどんどん食べられていることを知りました。「ああ、これだ!」と思ったわけです。そして、それらを科学的にまとめた「低フォドマップ食」理論の正しさを認識し、日本人にも有効だと感じたのです。
 高FODMAP食は、現在、IBSだけに有効としていますが、実は、IBD(潰瘍性大腸炎、クローン病)の食事療法として始まった歴史があります。しかし、一方では、発酵による短鎖脂肪酸がIBDに有効だとう報告があるため、その短鎖脂肪酸の役割と発酵による悪影響について、どう、整合性を持たせるかが、低フォドマップ食の最先端の研究課題になっていると私は感じています。
 喘息、花粉症、糖尿病など、以前は少ないが、最近増えてきている疾患と高FODMAPの関係は、今後、報告される可能性もあると思います。


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