過食+下剤中毒=大変!

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この図は、1937年(昭和12年)のレントゲン學會雑誌〔15〕に掲載されている図です。

同じ絵は最近の米国の教科書にもあり、大腸マニアにとっては世界的に有名な図です。
(原本はForssell 1928年)



AからDまでは普通にみられる大腸のヒダです。

ヒダは、腸の筋肉の一部が輪のようになって収縮してできます。

大腸の筋肉は横に走る筋肉が弱いので、腸の中の圧力がかかると伸びる筋肉は横の筋肉です。

慢性的に大量の便やガスで圧力がかかりっぱなしだと、横の筋肉がばらけてゆきます。

横の筋肉が伸びきってまうと、

半径が大きくなっているため同じ収縮が筋に生じても収縮力が及ぼす影響は小さくなります。

下剤中毒ではその副作用でヒダが消失することは以前からいわれています。

ヒダが消失するということは、ヒダを形成する大腸の筋肉がダメージを受けた結果だといえます。

日本で市販されている下剤やTVにも出ている下剤でも、中毒になるとヒダが消失してゆく可能性があります。

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下剤中毒ではその副作用でヒダが消失することは以前からいわれています。
ヒダが消失するということは、ヒダを形成する筋肉がダメージを受けた結果だといえます。今、日本のアチコチで市販されている下剤やTVにも出ている下剤でも、中毒になるとヒダが消失してゆく可能性があります。
欧米ではヒダの消失してしまった下剤中毒患者の大腸を「Cathartic Colon」といいます。日本語での医学用語はありません。昔の医学用語の「カタル性腸炎」と似ていますが、この場合のCatharticとは「下剤による」という意味なので「下剤中毒大腸」と訳したいところです。
大腸と小腸(回腸)の境界である回盲弁が閉じる機能も筋肉の収縮なのですが、下剤中毒ではその筋もダメージを受けて、逆流防止装置の役目をはたさずに大腸から小腸への逆流がみられます(回盲弁機能不全)。このような状況では日常的に大量の大腸菌が小腸に逆流することが想像できます。小腸に逆流した大腸菌は大腸にはほとんどなかった糖と大いに反応して大量のガスを発生させます。(つまり、これが便秘によるSIBO発生のメカニズムです。)
さて、下剤中毒と過食が一緒になればどうなるでしょうか?
というのは、
最近、大食いの摂食障害が増えていて、その人たちは下剤を常用しているというのです。
大腸の筋肉は下剤中毒によってヒダもできないほど弱りきっているところに
過食によって大量の便がくると、腸はどんどん伸びていきます。
逆に過食で便が詰まり気味だった場合に、下剤を飲むと、初めは出ますが、段々と下剤の副作用で腸の筋肉が動かなくなります。そのまま食べ続けると腸はどんどん伸びてゆきます。このような原因になるアントラキノン系下剤を飲むと腸が黒くなりますが、下剤を12年やめると腸の黒い色はとれてきます。しかし、色が良くなっても、腸の筋肉だけが改善しない人がいます。そのような人は過食を続けている人に多いのです。
以前に診察した30代と40代女性二人の写真を紹介します.


この人の現在の体重は35kgで現在は過食を止めていますが、
二十歳からの過食+下剤で大腸がこうなったのです。
ヒダはありますが、非常に薄くほとんど粘膜であり、大腸の筋肉が延びてしまっていることをあらわしています。

次の写真は同じよう過食+下剤中毒の40代の人です。


一見、腸が太くなく、ヒダも太いように見えます。
しかし、検査で造影剤を入れれば大腸はどんどん膨らんでゆきます。
これです。


そして、ヒダは細く消失傾向でした。
過食+下剤中毒でこのようになってしまった大腸の人は、
おそらく日本に何万人も存在するでしょう。
よく、街を歩くと、そうではないか?という人を見かけます。
大抵、痩せていて、お腹が出ています。

治療は、
これまでやっていたことを止めさせます。
過食はダメです。過食している間、便秘は治りません。
特に食物繊維を取り過ぎないように注意します。
野菜を控えてもらいます。
ガスが増えるFODMAPsを控えます。
要するに、便秘にいいと一般的に言われている食材は便やガスの量を増やして、膨らんだ刺激で腸を動かそうとするものですが、膨らんでも動かない腸の場合は、そのような食材は便秘を悪化させるので、徹底的に控えるようにします。
そして、腸のサイズ(幅)を小さくしてゆきます。

治療期間は幅の大きさ、つまり、腸の筋肉のダメージによって異なりますが、23年で症状が良くなることが初期目標です。しかし、残念ながら、過食+下剤中毒を10年以上続けた人の中には腸の筋肉がダメージを受けすぎて回復できない場合もあります。





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