特集:メタン菌

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メタン菌Methanogen①基礎知識

慢性便秘の治療に直結するメタン菌を知りましょう。
 

<メタン菌の基礎知識>

嫌気条件でメタンを発生する古細菌の総称。反すう動物の反すう胃内牛の腸内、人の結腸にも存在。古細菌は原始的な細菌なので、いろいろな特性がある。


まず、メタン発酵は基本的に以下の4つのステップから成ります。 
加水分解
 まず、色々な種類の好気性細菌(酸素を吸って生きている細菌)が作用して、タンパク質・炭水化物・脂質・セルロースなどの高分子有機物質(長い分子の物質)を、単純な糖分やアミノ酸・脂肪酸・水に変換します。 
酸化作用
 その後、酸を作る細菌がさらに有機酸・二酸化炭素・硫化水素・アンモニアへと分解していきます。
酢酸形成
 酢酸生成菌によってアセテート・二酸化炭素・水素に分解されます。
メタンガス形成
 最後に、メタン生成菌によってメタン・二酸化炭素・水がアルカリ領域で発生します。
 メタン生成菌によるメタンの生成経路には
(
) CH3COOH(酢酸)→CH4(メタン)+CO2(二酸化炭素)
(
) CO2(二酸化炭素)+H2(水素)→CH4(メタン)
の2つがあります。
 例えば、たまに夕食のおかずが残って捨ててしまうことってありますよね。その残飯にはタンパク質や脂質、セルロースなどが含まれますが、それが加水分解菌によってアミノ酸や脂肪酸、糖に分解され、それらが酢酸生成菌によって酢酸に、さらにメタン生成菌によってメタンとなります。
(1)水分調節
 メタン生成菌は、周囲物質が少なくとも50%以上の水分を含み、液体状態でなければ活性化しないだけでなく、増殖もしません。よって水田や湖沼、さらには牛の胃の中などに生息します。 
(2)空気遮断・光遮断
 メタン生成菌は酸素を利用できないだけでなく、増殖にとっても有毒になります(偏性嫌気性)。よって酸素を遮断する必要があります。また、流水や糞尿など、まだ酸素を含んでいる物質ではまず好気性バクテリアによってこの空気を消費してもらう必要があり、その後メタン生成菌が働き出します。光もメタン生成菌を殺すことはありませんが、増殖を妨げます。 
(3)温度調節
 メタン生成菌が住みやすいとされている典型的な3つの温度領域が確認されています。
   ①低温種:20℃以下
   ②中温種:25℃~35
   ③高温種:45℃以上
 原則的に、温度が高ければ高いほど有機物の分解速度が速く、ガスの発生量も多くなりますが、発生するバイオガス中のメタン含有比率が小さくなります。また、高温種の細菌ほど温度変動に敏感で、処理が不安定になります。こうした理由から、多くのメタン発酵施設で使われているメタン生成菌は②中温種です。しかし、最近では断熱技術の進歩や発酵槽の形式、処理条件の検討により欠点が改良されており、高温発酵のメタン発酵施設が増えてきています。 
(4)pH調節
 pH値は弱アルカリ性で、7.5程度であることが適しています。排水をメタン発酵する場合は糞尿がアンモニウムを形成するため、pHはほとんど自然にこの領域になります。一方、生ごみをメタン発酵する場合には、pHをあげるため石灰などを加える必要があります。 
(5)生ごみの安定した投入
 メタン発酵槽の投入口付近での過負荷を避けるため、例えば、1日に1回か2回という程度の間隔で均一に投入するのがよく、週単位の投入などは避けた方がいいです。その指標として、発酵槽負荷”[kg-oTS/m3d]という概念を導入します。これは、メタン生成菌に栄養分を与えすぎてプロセスが崩壊しない限度で、1日に発酵容積1?当たり投入可能な最大有機乾物(oTS)の量を指しています。この発酵槽負荷は、35℃の温度で0.51.5[kg-oTS/m3d]です。これを3kgまで理想的に増やせることは可能ですが、5kgが絶対最大限度値になっています。 
(6)攪拌
 攪拌操作はメタン生成菌と生ごみを効率よく接触させたり、温度を均一にしたりと様々な効果があります。より高濃度のメタンを得るためには必要不可欠の操作と言えるでしょう。 
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メタノブレウィバクテル属メタノブレビバクター属-ぞく、Methanobrevibacter)は、代表的なメタン菌の一属。哺乳類シロアリなどの消化器官水田、湖沼、海洋汚泥、ぬれた土など広範囲の嫌気環境に分布する。人体から最も多く分離される古細菌もこの属で、腸内古細菌として結腸内にも生息している。基準種はM. ruminantiumゲノム2007年にM. smithii ATCC 35061株について解読完了(1.853Mbp)。
外観は比較的短い桿菌シュードムレインより構成される細胞壁を持ち、グラム染色では陽性を示す。常温の中性環境を好み、真正細菌が排出した水素あるいは有機酸(ギ酸など)からメタンを合成してエネルギーを得ている。ある種の真正細菌と共生関係を持つものも知られる。今のところ14種がこの属に属しており、古細菌としてはThermococcusHalorubrum に次いで大きな属である。
学名methanum(メタヌム;メタン)+ brevis(ブレウィス;短い)+ bacter(バクテル;棒)であり、ラテン語でメタン(を生成する)短桿菌の意。
この属に属すM. smithiiM. ruminantiumM. oralisは比較的よく人体から分離される。報告数は古細菌の中で最も多く、人間に最も身近な古細菌と言える。よく知られている働きは、中のメタンを合成することである。2006年にはM. smithiiが腸内細菌を活性化させ栄養吸収率を上昇させるという報告がなされており、肥満に関与している可能性も示された。なお、メタン菌と硫酸還元菌(屁中の硫化水素を合成)は基質である水素をめぐって競合関係にあるため、発癌物質の蓄積を抑える可能性もあるが、まだ研究段階である。これ以外にも、口内の歯垢からM. oralisが分離されており、特に歯周病患者に多いことから、この病気に何らかの形で関与している可能性があると言われている。


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メタン菌Methanogen②便秘に有効な抗菌薬
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慢性便秘でメタンガスが多いことがわかっている。

メタンガスは、メタン産生菌のメタン菌によってつくられる。

メタン菌を減少~消滅させると、メタンガスが減り、

便秘の症状が改善するであろう。

よって、便秘に有効な抗菌薬について文献を紹介する。


J Antimicrob Chemother. 2011 Sep;66(9):2038-44. doi: 10.1093/jac/dkr251. Epub 2011 Jun 16.
The antimicrobial resistance pattern of cultured human methanogens reflects the unique phylogenetic position of archaea.
Dridi B, Fardeau ML, Ollivier B, Raoult D, Drancourt M.

Abstract
OBJECTIVES:
Methanogenic archaea are constant members of the human oral and digestive microbiota retrieved, in particular, from periodontitis lesions. The objective of the study was to determine their susceptibility to antimicrobials.

METHODS:
Using the macrodilution method in Hungate tubes with optical microscope observation combined with monitoring methane production, we determined the antibiotic resistance characteristics of eight methanogenic archaea.

RESULTS:
Methanobrevibacter smithii strains were resistant to ampicillin, streptomycin, gentamicin, rifampicin, ofloxacin, tetracycline and amphotericin B, with MICs ≥ 100 mg/L; these strains were also highly resistant to vancomycin (MIC ≥ 50 mg/L). They were moderately resistant to chloramphenicol (MIC ≤ 25 mg/L), and were susceptible to bacitracin (MIC ≤ 4 mg/L), metronidazole, ornidazole and squalamine (MIC ≤ 1 mg/L). The susceptibility of Methanosphaera stadtmanae was the same as M. smithii, except for chloramphenicol (MIC ≤ 4 mg/L), and Methanobrevibacter oralis yielded the same data as M. smithii, except for bacitracin (MIC ≤ 25 mg/L). The antibiotic susceptibility pattern of 'Methanomassiliicoccus luminyensis', which was recently isolated from human faeces, was identical to that of M. smithii.

CONCLUSIONS:
Human methanogenic archaea are highly resistant to antibiotics, being susceptible only to molecules that are also effective against both bacteria and eukarya. Methanogenic archaea are good candidates to test for antimicrobial activity against members of this unique domain of life. Further studies to develop new molecules specifically targeting archaea as potential causes of infection are warranted.

メタン菌に無効:アンピシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、リファンピシンオフロキサシン、テトラサイクリン、アムホテリシンB、バンコマイシン
やや有効:クロラムフェニコール
有効:バシトラシン、メトロニダゾール、オルニダゾール、スクアラミン
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以上から、メタンガスを発生するメタン菌を抑制する薬がわかった。
では、これらは日本で使用できるであろうか?


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クロラムフェニコール:日本では注射用と軟膏のみ
バシトラシン:日本ではバラマイシン軟膏のみ。トローチがあるようだが、入手困難?
メトロニダゾール:フラジール。日本で使用可。
オルニダゾール:日本で使用されない。個人輸入または、代理店で入手できる。
スクアラミン:日本ではサメの肝油としてサプリがあるが、薬として売られていない。
以上である。


これまで、

私が、フラジールを使用してきた理由は、

SIBO
に有効であるということと、

上記のようにメタン菌を抑制できるためである。


おそらく、日本で初めて、

便秘にフラジールを使用した医者は私と思いますが、

この知識が広がり、一般的になれば、

便秘で苦しむ人は半減するでしょう。


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<他の文献>
Methanobrevibacter smithii is the predominant methanogen in patients with constipation-predominant IBS and methane on breath.
Kim G, Deepinder F, Morales W, Hwang L, Weitsman S, Chang C, Gunsalus R, Pimentel M.
Dig Dis Sci. 2012 Dec;57(12):3213-8.
メタン菌はIBSの便秘タイプで有意に多かった。Human intestinal methanogens and lactulose administration.

Human intestinal methanogens and lactulose administration.
Rutili A, Brusa T, Canzi E, Ferrari A.
New Microbiol. 1993 Jan;16(1):99-104
メタンガス抑制にラクチュロース治療は有効でなかった。


(
注意)フラジールは、犬では便秘になるようなので、ペットには使用しないでください。
   フラジールで、かえって便秘になる人は0~2%です。


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