公開質問19:IBSになりやすい人


Office Uno Column


<質問>
初めまして。IBSのガス症状に小さい頃からずっと悩まされておりまして、先生のブログを見つけました。低フォドマップ試してみようと思います。 
しかし、IBSになる人とならない人というのはやはり体質の違いなのでしょうか・・・。同じ国の中でもなる人とならない人がいるのは不思議ですよね。遺伝もあるのでしょうか。

<回答>
IBSの発症率は、国によって、また、同じ国の中でも人種によっても違いがあり、様々な考察がされています。双生児を対象とした米国やオーストラリアの研究では、一卵性双生児が二卵性双生児よりもIBSの関係が強いとされているので、確かに遺伝の影響はあると思われます。また、両親がIBSでは子供のIBSの発生率が高まるとされていますが、それは遺伝によるものなのか、食生活なのかはわかっていません。
 では、以上について、FODMAPから考察してみます。
 高FODMAP食でIBS症状を来し、低FODMAP食で症状が軽快する場合、FODMAPの何らかのあるいは、複数の、あるいは全てに対して、過剰摂取か食物不耐症によって、過発酵を生じていると診断されます。例えば、小麦のフルクタン(イヌリン)を分解する酵素が人間にはないため、小腸で吸収されず、大腸で発酵します。小麦ばかりを食べていると、腸内フローラは、効率的に発酵させるために、発酵させる菌種が増加してゆく可能性があります(これは推測ですが、自然界の法則からすれば当然生じ得るものです)。増加した菌種を有する人と、普段から小麦を食べてないで増加していない人では、同じ量の小麦を食べても症状の強度が異なってきます。
このような状況を「感受性が高い」と表現しますが、IBSでは24%がフルクタンに感受性が高いとされています。
 また、高FODMAPで最も問題なのは、乳糖不耐症ですが、乳児期には乳糖を分解する酵素(ラクターゼ)が人体(小腸)で生成されていますが、次第にその生成がされなくなり、その活性が50%以下になると、乳糖不耐症の症状を来します。そのため、平均的に小学生で80%に乳糖不耐症のレベルの活性に低下します。この低下した活性は、牛乳を飲み続けて入れば、活性が高まるという事はありません。ですから、「飲み続ければ慣れてゆく」ということはなく、かえって、感受性が高まる危険性があります。民族的に牛乳や乳製品を摂取してきた場合は、成人での活性が高い民族がありますが、そのような体質を得るまでに1万年を要するとされています。これは、継続によって活性が高まるのではなく、自然の法則からすれば、乳糖の活性を継続できた人が生き残った結果ではないかと私は思います。
 高FODMAPで、症状が出やすい人と出にくい人の差は、腸内フローラ(腸内細菌叢)の個々の違いによると考えています。この腸内フローラは、5歳までに一生変わらない組成となるとされています。そのため、5歳までの食事や、生活環境(菌の経口摂取)が関与します。例えば、帝王切開と経膣分娩では全く異なる腸内フローラとなることがわかっています。その理由は帝王切開では母親の腹部は消毒され、無菌の状態で胎児が取り出され、かつ母体に投与された抗生物質は臍帯を経由して胎児に移行します。一方、経膣分娩では母親の膣に存在する乳酸桿菌を体表および経口して生まれてきます。その乳酸桿菌は母親の母乳を分解する役割があります。また、母乳と人工ミルクも組成が異なり、人工ミルクは大豆や牛乳などの成分であり、乳児の腸内フローラにも大きく影響します。ですから、人が生まれてくるそのスタート時点で、腸内フローラに非常に多くの影響が加わります。一旦形成された腸内フローラの組成は、簡単には変化させることが出来ないけれど、変化するとすれば、同じ組成のなかであっても、食べ物によって、若干の増加や減少があり、その若干の変化によって、「感受性」が変化しうると考えています。
 以上から、低FODMAP食は、IBSを根本的に治癒させることは不可能であるが、IBSの症状を軽減することが出来ます。しかし、IBSというものは、そもそも「症状」によって診断される疾患であるため、IBSの症状が軽快するということは、IBSが軽快するという事でもあるのです。  


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