公開質問18:低FODMAP食はガスの悪臭を低減するか?

Office Uno Column


<質問>
ガスや便の匂いは 
FODMAP で臭くなりますか?
臭い場合は
異常発酵しているとみて良いでしょうか? 


<回答>
基本的に、糖質の分解は発酵、たんぱく質(アミノ酸)の場合は腐敗です。
臭いは腐敗反応によるものです。
 
では、低FODMAP食で、オナラや便の臭いが減少するか?について考察します。

FODMAP食で、増加するガスは腸内発酵で発生する水素、二酸化炭素、メタンです。これらは基本的に無臭です。メタンガスの発生は、原始的なメタン菌が影響しています。タンパク質や脂質、セルロースなどが加水分解菌によってアミノ酸や脂肪酸、糖に分解され、それらが酢酸生成菌によって酢酸に、さらにメタン生成菌によってメタンとなります。メタン菌保有率およびメタンガス発生はIBSの便秘タイプ、慢性便秘で有意に高いことがわかっています。
Sci Rep. 2015 Aug 4;5:12693. doi: 10.1038/srep12693.
Reduction of butyrate- and methane-producing microorganisms in patients with Irritable BowelSyndrome.


Dig Dis Sci. 2012 Dec;57(12):3213-8.

J Gastrointestin Liver Dis. 2012 Jun;21(2):157-63
 Reassessment of the Role of Methane Production between Irritable Bowel Syndrome and Functional Constipation

一方、下痢タイプや混合型のIBSでは、メタン菌が少ないことが悪影響を来すと考えられています。
(このメタンが、IBSで、下痢になるのか、便秘になるかの大きなファクターと考えています。)
 
草食動物のゲップやオナラには大量のメタンが含まれます。メタンは3歳以下の腸内には検出されず、メタンを作り出すメタン産生菌は大人になる過程で徐々に腸内に定着してゆくが、その菌の保有率は人口の3分の1です。つまり、メタン産生菌は人口の3分の2にはないのであるが、その理由はわかっていません。メタン菌がある人は、草食動物のように食物繊維(セルロース)ばかりを摂取していると、メタンが大量に発生するということになります。メタンガス自体は無臭ですが、不純物を含むと悪臭となります。

放屁(おなら)での不快臭は、スカトール及びインドールの存在に起因します。また、メタンチオール、硫化水素(腐った卵の臭い)とジメチルスルフィドなどの他の悪臭ガスも香りを構成します。
メタンガスをつくらない人ではメタン菌の代わりに硫酸還元菌が働き、水素や乳酸を利用して硫酸イオンを還元して硫化水素をつくります。硫化水素は臭いが強く、さらに細胞毒性が強いため大腸炎の発生にも関係しているといわれます。硫化水素の発生を抑制するために控えるようにされている食品には、アーティチョーク、アスパラガス、ホエー、システイン、卵や酵素を含むベーカリー製品、豆腐/豆腐乳、もやし、すべての種類の豆、チンゲン菜、ブロッコリー、芽キャベツ、そば、キャベツ、イナゴマメ、カリフラワー、すべての種類のチーズ、チャイブ、チョコレート、コー​​​​ヒー、コラードグリー、クリーム、大根、乳製品、卵、ニンニク、サヤインゲン、菜、セイヨウワサビ、クズイモ、ケール、ニラ、すべての種類のレンズ豆、任意の動物からの乳、味噌汁、マスタード、玉葱、パパイヤ(少し)、エンドウ、ピーナッツ、パイナップル(少し)、ラディッシュ、ルタバガ、ザウアークラウト、エシャロット、サワークリーム、大豆チーズ、豆乳、ほうれん草、スプリットエンドウ、テンペ、豆腐、カブ、ウコン、キノア、ホエー、酵母エキスのように、高FODMAP食とかぶっているものが少なくありません。さらに、控えるべきサプリメントとして、クロレラ、システイン、乳製品、アシドフィルスとされています。


メタンチオール(methanethiol)は、玉ねぎの腐ったような臭いがしますが、嫌気性条件でメチオニンから乳酸菌や酵母により生成されます。メチオニンはヒトの体内で産生できないアミノ酸で、果物、肉、野菜、ナッツ、マメ科植物、特にホウレンソウ、グリーンピース、ニンニク、チーズ、トウモロコシ、ピスタチオ、カシューナッツ、インゲン豆、豆腐などに含まれます。

スカトールやインドールは低濃度でジャスミンの香りであり、高濃度で悪臭を放つ。スカトールやインドールは消化管内でトリプトファンから分解され、トリプトファンの多い食品には、たらこ、すじこ、肉、魚、豆、豆乳、乳製品、牛乳、ヨーグルト、卵、チョコレート、バナナ、ドリアン、マンゴーなどです。インドールは従来、大腸菌からのみ産生されるとされ、それが「悪玉菌イコール臭い便」とされてきましたが、大腸菌以外にも、Proteus vulgaris, Providencia spp., and Morganella spp. 等のインドール産生菌が存在しており、これら腸内フローラによって産生されるインドール が、サルモネラをはじめとした病原細菌の病原性を抑制している可能性が考えられています。
http://www.mishima-kaiun.or.jp/assist/report_pdf/2012n/n_h24_03.pdf

以上から、低FODMAP食の目的は、無臭のガス増加の産生を抑制するものですが、
その中には、悪臭のガスを産生する食品も多いため、
結果として、低FODMAP食で悪臭のガスの発生も抑制できると考えられます。

追記:よく、「ウエルシュ菌などの悪玉菌が増えて、悪臭を放つ」と最近の本にも書かれていますが、調査してみると、その文章は、昭和594月出版の「オナラは老化の警報機」荘淑旂著の33頁の孫引きのようです。 現代医学では、この菌は食中毒の菌です。


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